代表川島がキャリア教育総合研究所代表平田氏と対談を行いました

対談テーマ
「これからの社会を生きる子どもたちに必要な力とは
父親として、祖父として男性が子育てにどのように関わっていけるのか」

対談1

■NPO法人コヂカラ・ニッポンの取り組み

川島高之代表(以下「川島」)
本日はよろしくお願いいたします。まずは、NPO法人コヂカラ・ニッポンの紹介からさせていただきます。

一言で言うと、「実際に子どもたちが役に立つという経験を通じてキャリア教育を提供する」活動をしています。”キャリア教育“というとよくあるのは、小学生や中学生は、町のパン屋さんなどに行って、半日職業体験するというような取り組みです。高校も同じような感じの職業体験と、就職をどのようなところにしたらいいのか、というような授業です。

両方それはそれでいいのですが、小学生も実際世の中に役に立てることはたくさんあるのだから、役に立ってもらおうではないかと思うのです。役に立つまでには、失敗もある、試行錯誤がある、仲間割れもあります。でも最後は「役に立った」という経験をさせるのが大切だと思って始めたNPOです。

プロジェクト事例としては、千葉県の小学生(当時6年生)が洋菓子メーカーのヒロタさんと「お米のシューアイス」を作ったものがあります。歴史あるヒロタさんの商品の中でも過去最大のヒットを生み出しました。

つい先日は、沖縄県西原町の高校生が自分たちの町を元気にするために東京で特産品販売を行いました。非常にいい売れ行きでした。今回は黒糖や紅芋を使った地元の既存の商品を販売したのですが、将来的には新しい商品を子どもたちの手で企画開発して、実際に売って地域に貢献するプロジェクトにしていきたいと考えています。

もうひとつの特徴は企業や地域に役立つ経験を子どもたちにさせることは逆に申し上げると、企業や地域にとっては実利でプラスになるということにこだわっています。そのことで地域・企業は本気になると同時にこの活動が持続性が担保されるのです。一般的に企業が子どもたちのキャリア教育に取り組むといっても、社会貢献活動CSRとして行うものは単年度予算で持続性がない事業が多いものです。「社会貢献としてしょうがない」と(企業・地域側の)本気度が足りないようなことが多いのではないかと思うのです。そのようなことに対して、実利が伴うことでいろいろな面でプラスになるというのが特徴です。

平田豪成代表理事(以下「平田」)
参加する子どもたちはどうやって集まっているのですか?

「川島」
このような取り組みに関してはまだまだ保護者の理解がたりないと感じています。子ども集めに苦労している現状です。学校や地域が集めてくれることもあります。先ほどのヒロタさんのプロジェクトは小学校が、西原町では行政が取り入れてくれました。ケースバイケースです。

「平田」
実利が伴う活動にする、ということは、「何を、どのような方法で売るのか」という問題解決プロセスが必要だと思うのですが、ある程度そういう能力のある子がいないとできないのでしょうか?ただ話し合っていてもうまくいかないように思うのですが、参加するお子さんは選抜するのでしょうか?

「川島」
選抜はしません。まさに、商品を売る、地域に役立つというのは、ビジネスです。ビジネススクールと感覚は同じだと思っています。高校生には私自身がMBAの入り口の入り口…くらいですがレクチャーしました。物事をこう考えて、こうすることが、ビジネスのPDCAだよ、というくらいのことです。小学生には、もっと簡単に、仕入れ原価と販売価格と営業コストがあって、利益がでないとビジネスにならないよ、などということをOJTのなかで、やりながらわかりやすく教えました。その中で、主導的に動く子が自然発生的に出てくるのを待つのです。

■一般社団法人キャリア教育総合研究所の取り組み

「平田」
私どものキャリア教育総合研究所は数年前に設立しましたが、休眠化していたのをここ2年くらいで活動を始めました。“キャリア教育”ということを世の中で盛んに言われだしたのは2004年ごろからでした。国として関心が高まったのは、ニート・フリーター問題や若い人が職場に定着しないことからです。政府主導のキャリア教育キャンペーンは、「辞めない子を育ててほしい」という意図が根底にはあると思います。幼児教育から大学まで全ての段階でキャリア教育の必要性がいわれていますね。

滋慶学園グループでは、全国に専門学校を60数校展開し、18歳〜20代前半の方に向けて教育を行っています。私自身はこの春、専門学校の経営の第一線から退いて、今後はキャリア教育のプラットフォームをつくりたいと考えています。「キャリア教育」は政府からトップダウンで下りてきているものの、どの学校群でも十分受け止め切れているとは言えず、優れたソフトがないのが現状です。もちろんいくつかの素晴らしい取り組みはあるのですが、私たちもその一団に加わりたいと考えています。専門学校で取り組んでいるキャリア教育として、滋慶学園ではこの30年、学校に入ったら辞めない“中途退学ゼロ”就職した仕事も簡単には辞めない“早期離職ゼロ”の目標を掲げてやってきて、一定の成果をあげてきています。

次にこのキャリア総研でやりたいことは、幼児教育−小さいお子さんへの「キャリア教育」です。キャリアというのがその年齢にふさわしい社会的な役割を意識することであるなら、子どもにはその年齢に応じたキャリア発達が必要だと思っています。一番集目しているのは5歳から7歳くらいのお子さんへの教育です。この年代に考える力をつけさせてあげられるかどうかで、生涯学力というようなものが決まってくるのではないかと考えています。小学校に上がって1〜3年生くらいはなんとか過ごせたとしても、小学校4年生くらいに学習の壁があると言われています。それを乗り越えられるようなプログラム、有効な対策を立てられないかというのが私たちの幼児教育のテーマです。

文科省でも「キャリア教育」というのは究極すると生きる力を付けさせることだというような言い方をします。私が考える「生きる力」とは、いくつか切り取り方があるとは思うのですが、

1、考える力(自問自答する力)
2、交わる力(対話する力)

日本人はこの力が弱いといわれていますが、これからの若者にはそれを強化することが大切だと思っています。1,2は両方とも言語の力です。聴く読む話す書くがベースになります。

3、知る力(認知して理解する、新しい知識を自ら摂取する)
4、行動する力(はじめられる力)

この4つの力が学力を構成する原型になるのではないかと考えています。幼児期から学童期にかけてのこの力を身につけるメソッドを作っていきたいというのが今一番課題意識をもっているところです。

■子育てと人材育成で大切なことは共通

「平田」
文部科学省の定義するキャリア教育のキーワードは、「社会的・職業的自立にむけて」と「基盤となる能力や態度を身に着けることを通じてキャリア発達を促すのがキャリア教育だ」という定義です。川島さんのおっしゃっている体験学習の重要性は文科省も言っていることですね。私自身も体験学習という点にはこだわりを持っているのですが、体験学習は、体験を言語化することが大切だということです。体験しっぱなしではダメで、言葉で振り返り経験化することが大切です。専門の実習・実技教育ではそれを徹底してきました。言語に置き換える訓練をつんだ学生は同じ過ちをしなくなりますが、体験だけの子は、同じ失敗を繰りかえしてしまう。幼いときから言葉にして振り返らせることをメソッド化していけたら、子どもたちの成長に役に立つのではないかと考えています。学園では保育園を運営しているので、実験的にやっていきたいと思っています。

「川島」
概念的にも、私の経験的にもおっしゃるとおりだと思います。企業でのビジネスの現場においても、言語化ができる人材とできない人材では圧倒的な差がでています。大量生産・高度成長期の社会では、自分で言語化ができなくても言われたことを決められたプログラムの中でやるので十分でした。個人としてもとにかく言われたことだけしていればよかったし、経営側としても人材が豊富だったので、できない人がいればすぐに次の人に入れ替えればよかったのです。

今の日本ではそれではやっていけません。現在の成熟社会では、企業で活躍できるのは、経験から培った何かの解決策をもち、解決の行動ができる人材に限られているのではないでしょうか。それは技術職も営業職でも全部同じです。それができる人材は企業で活躍することができているし、今世の中で問題になっている長時間労働の問題も、仕事のアウトプットがいいので当てはまりません。相変わらず長時間している割に給料が上がらないような人は、やはり体験の経験化ができていない人がそのまま大人になって、言われたペンを作るような仕事しかできないようなことなのではないでしょうか。そういうことが結局、国の盛衰にも、個人の幸せにも影響してくるのではないかと思います。

「平田」
小1プロブレムということが言われますが、幼児期はお絵かきやダンスなど右脳を刺激する、右脳の発育を促す教育が多いです。一方で小学校からは急に左脳的なロジックで考える力を要求されるので、その転換がうまくいかない子が発生しています。右脳と左脳はバランスが大切です。そのバランスをとる移行期がとれなくなっているのではないかと感じています。移行期に親と子の対話の時間が足りない、年齢の違う子供同士が関わる遊びが減っている・・・

「川島」
群れの遊びが減っている、塾通いしていたり…

「平田」
親が子育てに自信がなくなって、左脳を刺激することをしていないように思うのです。しつけをするときに「理由を説明する」ことが減っています。「○○したらダメ」「どうして?」「お父さんに叱られるから」という会話が増えていないでしょうか。そもそも子どもに「ダメ」という、「禁止する」こと自体が減っているようにも思うし、親が丁寧に「原因と結果を説明する」やり取りが少ないですね。子どもなりに「原因と結果」を理解できるようにアプローチしてあげることがなくなっているのです。これが親としてのトレーニングで一番必要な点ではないでしょうか。

「川島」
今の時代、マニュアル化、ハウツーを欲しがる、すぐ結果を求めにいく傾向にあります。子育て中の親にとって、「結果」として一番わかりやすいのは偏差値、学校の成績。それをすぐにとりに行くのです。ワンクッションおくこと、遠回りしていくことをしなくなっているのではないでしょうか。そのような能力を親が自身が失っているし、何につけても即効性を求めてしまいます。「遠回りしろよ」と私はよく言っているのです(笑)

「平田」
小学生のときほど、身近なところでの指導的関わりが必要なことはありません。そのときに指導的に関わることに躊躇して、支援的にのみ関わると、きれいごとですませられるけれど、子どもの健全な成長は阻害されますね。高校生くらいの年齢になると、今度はしっかり話を聴いてやるような支援的関わりが必要なのに、一方的に「勉強しなさい!勉強しなさい!」と指導的に関わってしまいます。まったくやり方が逆転してしまっているのです。そこに問題があるような気がします。

いま我々の専門学校では学生の中途退学率は平均して3%くらいです。大学などでは10パーセントを超えます。滋慶学園グループでは長年にわたり中途退学0名を目指して取り組みをしてきているのですが、そのときに担任のかかわりで大切なのは支援的アプローチです。つまり学生本人は自信が無かったり、気がついていない「CAN(できる力)」をひきだすことです。他方、指導的アプローチは「MUST(ねばならない)」を押し込むことです。支援的・指導的両方とも必要なアプローチなのですが、タイミングや順番が大切です。引っ張り出してあげなくてはならないときにへこませてしまうような、順番が逆転してしまっているようなことも起こりえます。まずは学生の話をしっかりと聴く、学生をよく見る、学生のいいところ、好きなことを見出すことからがスタートだと考え、学園グループでは全教職員が「カウンセリングマインド」を身につけるための研修を行っています。支援的なアプローチに目覚めた教員は、学生との関係がうまく作れるので関わりにやりがいも見出すし、そのクラスは結果として中途退学が少なくなります。

「川島」
子どもの教育とビジネスは基本的に同じだと思っています。上司が部下に接することと同じなのです。上司として「売って来い!なぜ売れないんだ!」というのは誰でも言えます。部下の持っているCANをいかに引き出して、継続性を持たせながら成功体験を積ませることができるかが上司の力量です。CANに自分自身が気づき意識して取り組めるほど達成感を感じることはない。人生全てにおいてそのことが大切だと思っています。

「平田」
おっしゃるとおりだと思います。上司部下の関係でも、「ねばならないMUST」一辺倒だと「できることCAN」を意識できなくなってしまいます。「できることCAN」がないと「したいことWANT」もなくなってしまうのです。みんな苦痛、我慢して仕事をしていることになってしまいます。

「川島」
不機嫌な職場になりますよね。

「平田」
私たちの学校では学生募集のスローガンに「大好きを探そう」と掲げてやってきました。その考え方が定着するのにも相当な時間がかかりました。学校の受験生募集、広報活動というのは、学生の「大好きなこと」を一緒に探すことです。あなたにも「大好きなことがあるのだ」と気づいてもらい、やりたい気持ちを体験を通じて刺激する、それを仕事に育てていこうということなのです。このことは、表面上では同意してもらいやすいのですが、本当に『大好きを仕事にしよう』ということを教員が思えるかどうかというのは、その教員自身が自分の仕事を「大好きなのだ」という前提が必要です。それが組織として定着するには10年くらいかかりました。

「川島」
そこですよね、教員側が「仕事を楽しむ」ということですね。親向けの講演会で私がお伝えするのは、「親が大人を楽しむ」ということです。ビジネスでは上司が「仕事を、管理職を楽しんでいること」。「こんな楽しいこと、お前らもやれよ!」とまず親や経営・上司が言えることが必須条件じゃないかなと思うのです。

「平田」
5〜7才くらいだと、子どもたち自身が楽しんで取り組めること、親御さんにはそのことの意味を伝えて考えてもらうことが大切ですね。親が変わらないと子どもは変われないと思います。

対談3

■男性目線がもっと家庭や地域に入って活躍することを目指したい

「川島」
そうなると、父親の存在が大きいのです。敢えて大別して申し上げると、母親はどうしても近視眼的に目の前の成績が気になるし、「忘れ物ないの?!」と(笑)、支援的になりがちです。日本は家庭も地域も学校も社会全体が母性的になっているように感じます。

そこで、家庭では父親が「好きなことやれよ、母ちゃんは色々いっているけどさ」と言ってやるとか、学校でも地域のオヤジたちが入ってきて「おまえら、おもしろいことやろうぜ!」と先生ではできないことを一緒にやったりしたいのです。男性目線がもっと家庭や地域に入って活躍することを目指したい・・・。ファザーリング・ジャパンとコヂカラ・ニッポンに関わる私の想い根っこは同じなのです。

「平田」
これまであまり私自身そういうことを考えたことが無かったんです。今回川島さんとお会いするのでインタビュー記事など読ませていただいて「なるほどなあ」と。ぼくなんかは、年齢的に父親力というより“ジジイ力”(笑)・・・

「川島」
イクジイ世代ですね。イクジイは、まさに地域が求めている世代。テレビドラマや小説でも「三匹のおっさん」などが流行っていますが、まさにああいうように、地域社会で、子どもたちに対して男性目線の経験知、チャレンジしたこと、悔しかったこと、楽しかったことを伝えられて、何か困ったことあったら俺が助けてやるぜ、という懐の広いところを発揮させられるというのがファザーリング・ジャパンがいま進めているところなのです。

「平田」
幼少期に指導的アプローチが足りないというお話を先ほどしていましたが、祖父が親の指導的な関わりを支えるというのができるかもしれませんね。指導というのは、なにがいいか悪いか明確にする、なぜいいのか、悪いのか子どもの次元でわかりやすく伝えること。支援は、好き嫌いを発見して、好きなことを伸ばしてやること。指導「いい・悪い」と支援「好き・嫌い」という4分割のマトリックスで考えてみると、だれでも勉強は「嫌い」。でも勉強するというのは「いい」ことに分類できる。

おじいさんの役割は、「勉強は嫌いかもしれないけど、学ぶのはいいことだよ。なぜならばね…」と具体的な経験や事例を交えながら伝えてあげることでしょうか。親の役割を奪ってしまうことは問題があります(笑)、親はそもそも自信が無いのでね。親に対しては支援的な関わり、親としてのロールモデルを見せてあげることですね。究極は、「いいこと」で「楽しいこと、子どもが好きになれそうなこと」を示して、子ども一人ひとりの個性、いいところを引っ張りだしてやって、楽しいことを見つけてやること。

親に対しては、教師に子どもを育むことを任せるのではなく、親が子どものいいところを見出してそのことを教師と話し合っていくようになるのだ、ということをおじいちゃんおばあちゃんがバックアップできればいいですね。そんなことを今回川島さんとお会いするのをきっかけに考えることができました。

「川島」
自分の幼少期を振り返って考えると、好きなことしかやってこなかったんです。そうすると自然と人生に対してポジティブなんですよね。好きなことをやっていると続けられる。好きなことをやっていると上手になる。上手になると役に立つ、活躍できる。エンジンは「やりたい〜WANT〜」から始まっている。それがないとどこかで途切れてしまいます。両親から一言も勉強しろと言われませんでした。幸いにもそれでも進学校に進んで、楽しい思いをしてやってこられた。だから自分の子どもにもそうですし、NPOやPTAを通じて子どもに接するときも、「好きなことをやれ」と伝えています。それと同時に、そこには義務も生じることを伝えている。幼稚園生だろうが、高校生、社会人、部下に対しても同じことを伝えています。

「平田」
そうしてちゃんと成果もださないといけない。ただやっているだけではダメで、そのための手順はどうしたらいいか、と考えることが必要になってきます。

「川島」
社会人では仕事で成果が見えます。子どもたちにはコヂカラ・ニッポンの活動においては、社会で役にたつという目に見える成果を体験させています。モノが売れたね、地域の人が喜んでくれたね・・・。何でもいいと思うので、成果をみせることで「私・僕にもできる」「好きなことを行動して形にしたことで、継続したことで誰かに感謝された」「じゃあもっとやってみよう」と、自己肯定感、効力感、自尊心・・・。いろいろな呼び方がありますが、子どもたちにそういう経験を積ませたいと考えています。

「平田」
そういうことも、人材育成と一緒ですね。漠然と褒めるのではなく「具体的に褒める」、部下育成と一緒ですね。

「川島」
「すごいね」ではなく、具体的に取り組みやスキル、そしてその結果や誰にどのように貢献したのかを褒める。それは小学生でも一緒です。「人前で話すことが苦手でも、裏方に回って商品の包装を丁寧にしてくれたね、バックアップをしっかりしてくれたことで営業の担当の友達が売ってくることができたよ。」と貢献を伝えることで、子どもたちには火がつく気がします。

「平田」
小さくても成功体験が大事なんですね。それがあると、次にチャレンジすることができる。

「川島」
否定から入ると気持ちは縮こまってしまいますね。「あれができてない、なんでできてないんだ!」と、否定からはいってはダメだとおもいますね。

■子どもたちの能力って大人が想像しているよりすごいものです

「川島」
コヂカラ・ニッポンのプロジェクトは、子どもたちの成長に好影響なだけでなく、参加した企業側にも喜んでいただいています。冒頭申し上げたように、商品が売れて利益が上がるということはもちろんなのですが、もっと本質的な部分で成果がでています。それは、企業の社員に火がついた、ということなのです。子どもたちを受け入れること(工場見学など)はCSRとしてこれまでも何度も行っていたそうです。ですから、はじめ社員の方たちは「また面倒くさいことを。忙しいのに…」というような態度でした(笑)。

ですが、子どもたちの「僕たちがやりたいのはこういうことなんです!協力してください。」というプレゼンを聞いていただき、社員の方々とのディスカッションを経て2時間くらい経過したら、明らかに表情が変わったのです。「やろうぜ!子どもたちが俺たちに火をつけた!」と社員たちがやる気になって、結果的にいい商品が生まれました。ヒロタの経営者が本当に狙っていたのはそこです。どうしても停滞気味になる社内を活性化するために、子どもたちの力を借りたのです。

子どもたちの能力って大人が想像しているよりすごいものです。子どもたちの本気が伝わる、大人たちはそれになんとか返そうとします。負けていられない!と大人と子どもが本気の勝負になって、社員に火がついて組織が活性化したのです。

「平田」
僕は「国語」に注目しています。言葉をあやつる力を身につけてほしいと思っているんです。言葉を覚え始める時期の子どもたちに絵本や紙芝居などに関心を持ってもらって、子どもたち自身が絵本や紙芝居をつくる、ひとつの形にするというような体験をさせようと思っています。大人が思いも寄らないものができるかもしれないですね。

「川島」
先日、「米袋プロジェクト」というのを行いました、首都圏の子どもたちが日帰りで農業体験し、その一日を家に帰って絵と文字におこしてもらいます。農家の人がなかから一枚選んでくださり、その絵を米袋にして売り出しました。米農家の人は子どもたちの発想力に驚いていました。米づくりの雰囲気が本当によく伝わる絵とことばだったのです。実際に売れるかどうか、ということは運にも左右されますが、斬新な発想力でいい言葉、いい絵が出てきます。

「平田」
私は三木成夫氏の書籍に影響を受けているのですが、右脳と左脳のバランスということをよく言っています。小学校3年生くらいからみるみるこどもの発想がつぶされていく。大人の下手にしたようなのしか出なくなる。小学校教育では正しい言葉、言葉の「ルール」ばかり身につけてしまって、本来の言語能力を発育させることをしていない。本来であれば、4年くらいからが自分のファンタジーとしてもっている世界を、自分自身の言葉で表現し、大人にも子どもにも心に響く物語を作れるのではないかと思うのですが。それが小学校教育の残念な点だと感じています。

「川島」
同じことの弊害が中学受験で起きています。言語の正解をつめこまれる。でも言語には正解はない。それまで同じように砂場で群れ遊びをしていた子どもたちが、中学受験のためのお受験生活をした子と、そのままの生活で公立に進んだ子に分かれます。その子どもたちを見ていると、高校進学の時点で圧倒的な違いが生じます。私の息子は中高一貫の学校に高校から進学しました。中学から進学した子どもと、高校からの子は、ちょっと話せばすぐにわかるくらい違うのです。更に言ってしまえば、地元の中学のクラスでも、部活で活躍している子や役割を担っている子など要は居場所がある子、とでも申しますか、そのようなお子さんの多くは保育園出身です。自然の中でのびのびと遊んで大きくなった子どもが、中学で活躍している。語弊を生じるので普段は言わないのですが、きっちり系の幼稚園の子は、中学で低迷しているように見受けられます。

「平田」
保育園か幼稚園かで違うねというのは昔から言われていたようですね。教育と保育のちがいでしょうか。保育園は右脳中心の遊びが中心。幼稚園は教育的アプローチで左脳中心かもしれない。5〜7歳は、その後の人生全体に渡る学力、学習力を決める大事な時期のように思います。そのときに大事なのは、大人と子どもの関わりではないでしょうか。現在の子どもたちを取り巻く教育の行き詰まり・過剰を整理していくのが必要だと思っています。まだ個人的に感じているだけですので、これからエビデンスを積み上げないとならないですが。

「川島」
エビデンスがないと保護者は動かないですね。コヂカラ・ニッポンの取り組みは保護者から「いいですね」、と言っていただくことは多いのですが、実際子どもを参加させるかとなると、「・・・とはいってもやはり塾に」となる(笑)。どうしても、目先の点数重視に走ってしまう傾向が強いのです。それは、コヂカラの活動は成果としてエビデンスがみえないからというのも大きな要因だと思います。キャリア教育に取り組んでいる仲間とも、「定量化してエビデンスを示せないか」と話しているが、難しい課題です。

「平田」
ナラティブとエビデンス、両方あると説得力がありますね。数値化できることばかりでなくとも、どのようなお子さんが何に取り組んだらどうなったか、という物語を示せると説得できますね。

「川島」
どうしても目先の成績に目が行きがちな母親に対して、そこで影響を発揮できるのは父親だと考えています。しかし、子どもと接する時間が少ない中では、家庭での発言力もないですね。だから、ファザーリング・ジャパンでは「会社に引きこもっていないで!」と父親たちがもっと小さいころから子どもと接する時間をもつよう、「イクメン」推進の活動をしています。仕事以外に、家庭や地域で居場所ができるというのは父親自身にとってもいいし、子どもたちの普段の日々の生活がわかっている上で、話ができるのは子育てにも好影響です。そうはいっても、仕事が忙しくて家庭に帰れない現状があります。

職場では、ワーキングマザーが増えると同時に、働く人の多くはワーキングファーザー。「男性だから遅くまで帰れなくて当たり前」という上司の固定概念を変えるために、「イクボス」推進の活動をしています。「イクボス」という言葉はまだ去年使い始めたばかりなので、認知度はこれからです。まずイクボスがいないと、父親が家庭という教育の現場に参画できない。父親不在だとどうしてもママ主導の、目先の成績に注力する教育になってしまう傾向がある。ママ主導になることを否定しているわけではありません。お母さんはいつでも子どもの安心できる母港になってもらいたい。でもそこに、父親がしっかりと関わっていくようにしたい。そのいい循環をつくりたいのです。

■本当の意味でキャリア教育が充実すると・・・

「川島」
コヂカラ・ニッポンとしても、もう一歩踏み込んだ活動を広げて行きたいと思っているのです。専門学校グループを含め、キャリア教育総合研究所と一緒にキャリア教育の普及に共に取り組めればと思っています。キャリア教育というと就職先を探す、あるいはお仕事体験を半日して…ということに留まっていますが、もっと広く、「生きる力」を捉え取り組んで行きたいのです。キャリア教育に携わっている方々はみなさん同じような課題に行き詰っていると思います。一緒にムーブメントを起していけたらいいですね。

「平田」
「キャリア教育」考え方のベースは一緒でも、年齢・発達段階によってやるべきことは違うものです。各段階に対して活動をしている団体で集まって、全体のイメージが作り上げられるようなことができるといいですね。本当の意味でキャリア教育が充実すると、子どもたちの学校選びも変わってくると思います。就職の基準が変わるので、進学先の選び方も変わってくるでしょう。

「川島」
就職のための予備校のような形で進学先を選んでいる現状は変わっていくでしょうね。

「平田」
今、発達に課題のある若者の進路が問題になりますが、偏差値教育のなかではどうしても、できないことのコンプレックスを植えつけてしまう。発達のデコボコがあることをみとめ、凸を評価する仕組みがあるといいと思う。凸を伸ばすことができると、進路の選び方もかわってくるのではないでしょうか。

「川島」
ファザーリング・ジャパンでは、発達障害のお子さんをもつ父の会をやっています。凹を埋めるのではなく、凸が伸びると凹があがるのではないかと思っています。パランリピックのスローガン、「ないものを嘆くな、あるもの活かせ」に共感します。

「平田」
親も、子どもの発達に問題があることをどう捉えるか、というのは大変難しいことです。いまの教育では、凸の内容によって、幸せになるケースとコンプレックスに苛まれるようなケースがあるように思います。親をサポートすることも必要でしょう。

「川島」
コヂカラの活動目的は一つそこにもあるのです。その子が絵を描くことがとても好きだとしても、親はそれだけでは納得しないし、学校でその力が認められるためには・・・。例えば絵画コンクールで評価されるためには、いわゆる教科書的な絵が描けなくてはなりません。絵がうまくて絵が大好きなのに、絵すら認められない。認められる結果を出せる経験をさせたい・・・。結果を出せる機会を創出したいのです。好きなもので走り続ければいい、あとのことはそのうちついてくるよ、と伝えていきたいと思っています。

対談2


2015-09-22 | Posted in イベント・講演・対談No Comments » 

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