パラレルキャリア・プロボノ対談第2弾 / 「躊躇するなら踏み出した方がいい」

本業を持ちながら自身のキャリアを夢の実現や社会貢献活動にも活かす「パラレルキャリア」「プロボノ」。対談第2弾は昨年末コヂカラ・ニッポンと共同プロジェクトを行ったパーソルキャリア株式会社からキャリアアドバイザーの新見孝之さんです。本業のお話からパラレルキャリアを実践するまでの経緯、その効果までをお話しいただきました。

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コヂカラ・ニッポン大森 (以下大森):
ー今日はよろしくお願いします。ー

パーソル キャリア新見さん (以下新見):
よろしくお願いします。

大森:
ーはじめに新見さんの本業について改めて伺わせてください。ー

新見:
私はキャリアに悩んでいる個人の皆様に最適なキャリア提案をするキャリアアドバイザーをしています。キャリアカウンセリングを通じて、”なぜ転職をしたいのか” “転職して何がしたいのか/何を叶えたいのか” を伺いながら具体的なキャリアの方向を示すというミッションです。 “ただ求人を紹介する”という事ではなく、”キャリアを提案し、それを実現できる方向性・求人を共に探す”といったものです。

大森:
ーまずはしっかりカウンセリングを行った上で提案するという事ですね。ー

新見:
そうですね。”求人を紹介する”という事だけでもビジネスとしては成り立つのかもしれませんが、それだけでは我々が働く上での価値観や目指す方向性としては満足できるものではなくなってしまいます。

大森:
ー単純に”求人を紹介された”というだけでは、たとえ入社が決まったとしても”事前イメージと全く違う”、というギャップが起きてしまいそうですよね。ー

新見:
そうなんです。過去の転職でそのような経験をして弊社にご相談に来られる方も多いですね。そういった方々は基本ネガティブな思考になりがちですが、”今の環境が合わないと感じる所はどこなのか” “本当は何がしたいのか” “どんな環境で自分らしく働きたいのか” をしっかりと聞いた上で、それが実現できる方向性を提案しています。

大森:
ーキャリアの悩みに寄り添ってくれたり、話を聞いてくれる人がいるだけでも気持ちが楽になりますし、その結果、自分らしさを持って転職活動に励めますよね。
最近ではパーソルさんのCMを拝見させて頂いたのですが、ホームページとも連動していて、見た方の心に刺さる内容だと思い見させていただきました。ー

新見:
今回制作には相当労力をかけましたね。その分是非皆さんにはご覧いただきたいです。

大森:
ーちなみに新見さんご自身は転職のご経験ってお持ちなんですか。ー

新見:
以前はゼネコンで現場監督をしていました。B to Bの仕事がメインでトンネルを掘ったりしていましたね。この時は今と違いエンドのお客様が誰かわからない中で仕事をしていました。会社の指示のもと現場に配属されて目の前の工事をただただ完成させるといったように。なので今と違って “誰の為に””何をしているのか” というのが良くわかりませんでした。業務も大変で “しんどい” って気持ちもありましたね。

大森:
ー現場で作業していると問題が起きた時にすぐ対処しなければいけませんし、予想のつかない突発的な出来事も起こるわけじゃないですか。常に万全の準備を心掛けていないといけませんよね。ー

新見:
そうなんです。特に職人さん達が滞りなく工事ができるように段取りを組むことが大切です。とは言っても今話したように突発的な出来事は必ず起きますし、その場の判断や指示がズレると余計手間がかかったり、事故にも繋がります。そういった意味で常に緊張感はありましたね。

大森:
ー業種は全く違いますが、そのご経験って現在の業務にも活かしてらっしゃるんじゃないですか。ー

新見:
そうですね。”過去の仕事で身についたスキルを現職でどう活かすか”という観点で言うと沢山あると思います。今の仕事で求職者の方と面談する際にもこの点は意識していますね。「この仕事で磨いたこのスキルが、次のキャリアではこう活かせますね」と噛み砕いてカウンセリングをするようにしています。

大森:
ーカウンセリングといったら話を聞くという事が大切だと思うんですが、慣れないと一方的に話をしてしまったり、聞く姿勢を忘れてしまうと思うのですが。ー

新見:
始めはみんなそうですよ。私の今の本業は、パーソルキャリアにキャリアアドバイザーとして中途入社した人達が一人立ちし、カウンセリングをしてキャリア提案できるようになるまでの3ヶ月間を見ています。殆どの人が全く違う職歴なので、最初は人の話を”聞く”という事が中々出来ないですよね。

大森:
ー“聞く”というスキルは一番難しいですよね。ー

新見:
どうしても自分の意見を言ってしまったり、主観で言ってしまう事があるので、始めの3ヶ月間でしっかり育成・アドバイスをしています。

大森:
ー新見さんご自身は入社されてどの位なんですか。ー

新見:
丸4年になります。3年半キャリアアドバイザーとして経験を積んで、直近の半年は育成を専門とする立場にシフトしています。

大森:
ーシフトするタイミングで今回コヂカラ・ニッポンと共同プロジェクトを行ったという事だったんですね。ー

新見:
そうなんです。入社して丸3年経った時に、自分の今後のキャリアに悩み始めて。。。そのままキャリアアドバイザーとしてハイパフォーマーになるのか、一個上のマネジメントとして数名のメンバーのリーダーとして会社の業績を上げるていくのか、キャリアアドバイザーの経験・スキルを活かして別のキャリアを歩んでいくか。。。人材育成とか人材研修などに興味が向き始めていました。その中で “転職” という選択肢ももちろんありました。それを直属の上司にも相談しましたね。

大森:
ー転職を上司に切り出すのって勇気がいりそうですね。ー

新見:
「今本当に悩んでいて、このまままっすぐ突き進むのか、上に行くのか、それとも横に別の所へ行くのか。。。そうなると転職という事も選択肢に入れてます。」と正直に上司に話しました。すると「お前がそっちをやりたいんだったら、転職という事も考えた方がいいよね。」と言ってくれましたね。

大森:
ー悩んでる時にそう言ってくださるのは凄く気持ちが楽になりますね。中々そう言ってくださる方も多くないような気がしますし。ー

新見:
そうなんですよ。だいぶ楽になりましたね。その時上司は別の人に私を繋いでくれたり、相談までしてくれましたね。でも、実はその時私の異動が既に決まっていたっていう(笑)

大森:
ーえっ!?(笑)ー

新見:
なんだ、決まってたんじゃんって(笑)でも、そこで私が話をしたからこそとは思っているんですけどね(笑)ちょうど同じ時期に今の人材育成の部署から人が欲しいという声が上がって。それと上司に相談したタイミングがかぶったんです。そうしたら「新見を出してみるか。」って話に自然となったようで(笑)それからはコヂカラ・ニッポンと出会うきっかけとなった研修がスタートしました。研修の中で内省を繰り返していくと、リーダーも大事だけれど育成もいいなと思う自分がいて。その後コヂカラとのプロジェクトを進めて行くと、”人を育てる” という事は”子ども教育”や”子育て”に通じるところがあると気付きました。実はその時、育児に悩んでいた時期でもあったんです。

大森:
ーそうだったんですか!?ー

新見:
実はこう見えても”短気”なところがあって(笑)家の中で、大きな声で怒ったりした事も何度かあったんです。だけどコヂカラ・ニッポンの活動を通じて、”子どものチカラをもっと信じていいんだ”と思いました。こちらからの押し付けでは駄目で、もっと”待つ”という事も意識した方がいいと思いました。これって普段の仕事の中でも活かせるし、人を育成するという点でも活かせると思うんです。だから「子どものチカラを信じる」という考え方はマネジメントにも活きるし、その点でコヂカラの活動にはとても共感しています。仕事だけをやっていたら気付かなかった側面が、仕事”外”の取り組みに関わる事で視野が広がり、自分の生活にも幅が出ます。本業が大変でもコヂカラの活動で介在価値ややりがいを見出せるとモチベーションのバランスも取れるのでこういう活動はどんどんやった方がいいと感じています。

大森:
ーコヂカラの活動に携わる前は、ボランティアに限らず何かしらの活動経験はあったんですか。ー

新見:
学生時代にボランティアやNPOの立ち上げに関わったことはありました。社会人になってからもボランティアは続けていたのですが、仕事が忙しくなり行けなくなってしまって。。。

大森:
ーその時はどんな活動をされていたんですか。ー

新見:
これは今回コヂカラを選んだ理由の一つなのですが、”経済的理由や家庭環境など、様々な理由で塾や習い事に行けない子ども達を公民館に集めて勉強を教える”という事をやっていました。

大森:
ーそれは子ども達も喜びそうですね。ー

新見:
喜んでくれましたね。でもそれ以上に、私たちが学んだ事が多くて。そういった子ども達って「お前には無理だ / 出来ない」「高校なんか行けるわけがない」と、親や先生に言われて育っているから、「自分にはできない」と思い込んでしまっている。そこで私たちは運営ボランティアに大学生のみを採用していました。大学生って社会人とまではいかないけれど、経験があって色々な可能性を持っているじゃないですか。勉強しにくる子ども達は親、先生以外の大人と接する機会がない。だからそういった若者と接する事で、「自分達もこうなれるんだ!!」といったモデルにしてもらえたらと思い大学生に絞ってました。そして、実際に進めていくと彼らにも本当は夢がある事がわかったんです。”看護師になりたい” “保育士になりたい” といったように。この時に、大学生という若者が寄り添って一緒に夢に向けて活動する事が大事でした。その後、自力で高校受験をし、専門学校へ行き、10年後に「ちゃんと看護師になりました」「保育士になりました」と連絡が来た時には自分の介在価値が本当にあると心から思いました。

大森:
ーそれは感動しますね。ー

新見:
子どもって本当に力があるし、サポートする環境さえ整えば思う存分力を発揮できるはずなんですよ。そういった考え方がコヂカラにも通じるところがあると思いました。
そして私が学生や社会人になりたての頃にボランティアの活動が段々出来なくってしまった事で、こういった活動を”やりたい”という気持ちが心のどこかにずっとあったんですよ。ただそこに踏み込むきっかけや勇気が中々掴めなくて。

大森:
ー前職のお話を聞いただけでも、多忙だったのが想像できますね。ー

新見:
ひどい時なんか、夜勤をやってから寝ないでボランティアへ行き、2時間睡眠を取って仕事へ行く、という日もありました。

大森:
ーえっ!!それで体調崩したりはしなかったんですか!?ー

新見:
なんとか大丈夫でしたね(笑)でもそれだと中々続かなくて。。。そうこうしている内に結婚をして子どもが出来て、活動に費やせる時間が減っていきました。だからこそ”やりたい”という想いはずっとありました。この半年間は本当に楽しかったです。やる事が沢山あるけどそれが楽しさにつながっていたので。今は他にもやってみたい事が沢山あります。

大森:
ーちなみに当時のボランティアの活動はご自分で一から立ち上げたんですか。ー

新見:
そうです。社会福祉協議会というのが各自治体にあって、学生時代の友人の親がそこに属していて。そんな流れからボランティア団体では自分が代表をやっていました。

大森:
ー代表でやられていたんですね。それだと子ども達から届く声は尚更喜びを感じますね。
話は変わりますが、新見さんは趣味で剣道をやられているとも伺いました。ー

新見:
はい、やってます。小学生の時に始めて、中・高・大学生と間が空いてしまったのですが、5年程前から再度始めました。今私が住んでいる場所って、私の妻が生まれ育った場所ってだけであって、私にとっては縁もゆかりもない所なんですよ(笑)私が知っている人、誰もいなかったんですよ(笑)※東京都大会で3位になった時の1枚。

大森:
ーそれは少し切なくなりますね(笑)ー

新見:
そうなんです(笑)で、ちょうど仕事が落ち着き始めた所で、近くに剣道ができる所がある事を知って。上の子の首が座る前くらいに抱っこをしながら見学に行きました。そしてその翌週から参加する、みたいな感じで(笑)そのおかげで地元にネットワークが出来始めましたね。

大森:
ー好きな趣味でネットワークが広がるっていうのはいいですね。ー

新見:
そうですね。剣道だけでなく今回のコヂカラの活動を通してもネットワークが広がりましたね。仕事だけだと中々ここまでネットワークって広がらないじゃないですか。そういった点が実務を持ちながらパラレルキャリアやプロボノを行うメリットなんじゃないかなと思います。

大森:
ーそんな中、私が気になったのは “時間の使い方” で、土日の使い方が特に大切になってくるのかなと思ったのですが”家族との時間”っていうのは実際の所どうだったんですか。ー

新見:
その点に関して言えば、家族からは相当理解や協力をもらってますね。

大森:
ーお子さんは二人とも男の子でしたっけ。ー

新見:
そうです。週末は土曜日コヂカラの活動をして、日曜日は午前中に好きな剣道をやって、午後から子ども達と遊ぶみたいな(笑)

大森:
ー子ども達から「パパ、どこ行くのー!?」って言われるんじゃないんですか?(笑)ー

新見:
言われます言われます(笑)妻からしたら男の子2人を抱えて公園に連れて行くのが大変・・・といったのもありますが彼女はそれを口に出さず、私が「今度この予定に参加してくる。」と言うと「わかった。」って言ってくれるんです。

大森:
ーいい奥さんですね~。(笑)ー

新見:
そうなんです(笑)本当にありがたいです。反対にこういった環境がなかったらできない生活ですね。自分から”楽しい”とか”こんなやりがいを持ってやれてるんだ”という事を家でも伝えているからこそ協力してくれるのかなとも思いますね。

大森:
ーそれが仕事の愚痴だったら、反応も変わってきてしまうでしょうしね。ー

新見:
そうですね。「じゃあわざわざ行かなくてもいいじゃん!!」って思われると思います。なので「活動を通じて子ども達がこんな反応をしてくれたんだよ。」「凄い喜んでくれたんだよ。」って話をしますね。その経験が仕事にもつながって相乗効果が出ているので、”羨ましい”って言われた事があります。

大森:
ー奥さんからですか!?ー

新見:
はい。仕事”外”の活動経験が本業に繋がり、業務がより楽しくなるというサイクルを見ての”羨ましい”って意味ですね。妻も仕事が大変な時期があり仕事に対して愚痴を吐いてしまうこともあったので。私も昔は仕事の愚痴や弱音を吐いてしまいお互いで愚痴を言い合う状況になった事はありましたが、私が段々楽しい話しをするようになったので、その辺りから羨ましいって言葉が出てきましたね。(笑)私の影響かはわかりませんが、妻も最近は資格取得に向けた勉強を始めました。

大森:
ーまさしく”本業”と”本業外での活動”の相乗効果ですね。ー

新見:
本当にそうです。これはインタビューされているからとかではなく、本当に相乗効果ってあって。自分が今人に教える立場にいるので “どんな教え方がいいのか”とか、研修を作れるコヂカラのメンバーの方々から学ぶ事も多いです。反対に自分が研修を受けた事がコヂカラの活動に活きたりもします。そうなると”自分が活動に貢献できている”という気持ちが持てるし、大切な時間をさいて活動に参加する事が仕事や子育て、夫婦関係に活きているという実感がありますね。

大森:
ーそれでは最後に、パラレルキャリアに興味はあるがまだ踏み出せていない人達へ向けてメッセージをお願いします。ー

新見:
私自身もそうでしたが、躊躇しているのであれば是非一度やってみるのがいいと思います。私も「時間の使い方をどうしよう」「休みの日に家族との時間が取れなくなる」「途中で投げ出したりもするのかな」と思った事もあったんですけど、逆にコヂカラだから良かったというのがあるかもしれません。やれる範囲でやればいいっていうスタンスじゃないですか。皆さん実務をもってやっていますし。根つめて、タフな人じゃないとできないっていうわけでもないし。 “自分のやれる範囲でやる” っていう事が許されているのが良かったと思います。その代わりやり始めたら興味があってその団体に関わっているはずなので、責任を持ってやれる人がきちんと続くと思うんです。やればできると思いますし。やはり躊躇するなら踏み出した方がいいって思いますね。

大森:
ー素晴らしいメッセージありがとうございます。今日はインタビューありがとうございました。ー


2018-04-06 | Posted in イベント・講演・対談No Comments » 

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